業務システムのための上流工程入門読みました

業務システムのための上流工程入門

業務システムのための上流工程入門

今回は、寸評ではありません。読んだ上で思い巡らせたこと、という感じです。

副題に「要件定義から分析・設計まで」とあります。本書では、
「上流工程」=「要件定義」+「基本設計」+「現状分析」
と定義しています。が、印象的には、基本設計についてしか書いてありません。要件定義に関しては、「こんな要件シートが出来るよ」くらいの成果物が書かれています。入門と謳っていますので、こんなもんかなぁ程度のことが分かる程度で良いのかもしれません。基本設計の成果物サンプルが最後についている点は、入門書として適切です。

単なる推測ですが、著者は、ユースケースを初めとするUMLには、余り精通していないか、嫌っているのではないかと思います。なぜなら、「UMLでは、業務フローをユースケース図で書く」と書いているからです。著者が誤解しているのか、私が誤解しているのかは、別の方に判断して頂くとして、私の意見はこうです。ユースケースは業務フローを記述するためのツールではなく、システムあるいは、業務機能の振る舞いに対する要求を記述するためのツールです。UMLで、いわゆる業務フローを書くのであれは、アクティビティ図を用いるのが妥当です。どちらにしても、表記法は分析・設計のツールであって、分析・設計の目的ではないので、設計者の好みや、扱う領域、また効果によって、色々な記法を用いて良いと思います。が、あるツールを批評したり、紹介したりするのであれば、少なくともそれをある程度理解してからにして欲しいものです。ユースケースの弁護をしたからと言って、UMLが素晴らしいツールである、と主張するつもりはありません。ただ、これでは余りにもかわいそうです。