目標を突破する実践プロジェクトマネジメント寸評

CD‐ROM付 目標を突破する 実践プロジェクトマネジメント

CD‐ROM付 目標を突破する 実践プロジェクトマネジメント

今朝、出勤の電車の中で読み終わりました。プロジェクトマネジメントにいつも頭を悩ませる身にとっては、前向きになれる一冊でした。

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か の著者エリヤフゴールドラット師(駿台風表記)が謳っているTOC(Theory of Constraints)をベースとして、実践方法及び実践事例の紹介をしています。いや、どちらかというとその後の著作 クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか? の内容がベースなのかも知れません。前者は読みましたが、後者は読んでいませんので、定かではありません。本書を読んで、クリティカルチェーンも読んでみようという気になりました。

以下に書きますが、印象に残った点や主張を列挙します。

    • 分かりやすい。
    • 実践し易い。
    • プロジェクトマネジメントは、プロジェクト経営だ。
    • 進捗管理・確認は、「あと何日?」が最善だ。

だいぶ分かり易い内容で、かつ、簡単に実践出来そうなところが一番良い点です。それから科学的段取り八分や、親方バッファなど、直感的な述語も好感が持てます。

読み終わってから気がついたのですが、一番最初に本書のODSC(Objectives, Deliverables and Success Criteria)と書いてあります。この本の成功基準として書いてあることを読むと、その全てかどうかは私には計測できない点もありますが、私に関しては、少なくともいくつかは基準をクリアしています。本そのものの執筆も成功と言って良いのではないでしょうか。

中でも、共感したのは、「マネジメント」は管理ではなく、経営だ、という主張です。プロジェクトマネジメント=プロジェクト管理という、上司の理解の下に、様々な仕事をさせられることがあります。しかし、私は、いわゆる「プロジェクト管理」は、単なるアリバイ作りだと思っています。以前から、マネジメント=やりくりである、と思っていたので、その主張に好感を持ちました。

その次に共感したというか、やっぱりそうかな、と思い直したのが、「進捗管理・確認は『あと何日?』が最善」という主張です。パーセンテージで表すやり方では、やはり、本当の意味でのマネジメントは出来ません(と考えます)。
マネジメントをやり始めたばかりの頃は、単に担当を呼んで、何割くらい出来ましたか、と聞くばかりでした。このやり方は、担当本人の10割と、マネージャの10割が一致しないことが大半であることと、項目の消化率=時間やお金の消化率とは限らない、という理由で、信用できないことが直ぐに分かりました。その後は、EVMという手法を自己流ですが導入して、CPIだのAVだのを算出してみるようになりました。この方法は、担当の直感ではなく、出来高基準を設けて進捗率を算出する点で、最初の方法よりは正確です。しかし、私にとっては、実践が面倒であるという点で難があります。更に、良くありがちなリスケ(スケジュール再計画)を行うと、もうグダグダになって、何が正確なのかさえも分からなくなります。
本書のやり方では、50・50で工程表を引き、親方バッファを設ければ、「あと何日?」だけで、進捗遅れを迅速に把握でき、更に、早めの対処が可能です。実践しやすいということと、危機管理がし易いという点で魅力的ですので、是非実践してみたいと思います。ただ、私も、無意識の内に、この方法でマネジメントしていたこともありました。そのときのことを思いかえすと、一番うまく行っていた気がします。が、これまでは、報告資料を書き辛い手法なので、何となく、「良くないやり方」と思っていたのです。ただ、「あと何日?」で怖いのは、結果的に嘘をつかれること(過多報告、過少報告をされること)です。これは私の意見ですが、過多報告の場合は、担当とマネージャの間に信頼関係がないこと、過少報告の場合は、完了基準が明確になっていないこと、が原因なので、まず、その点を改善する必要があります。

とまぁ、長々と書いてしまいましたが、考えることの多い一冊でした。