エンジニアのための時間管理術寸評

エンジニアのための時間管理術

エンジニアのための時間管理術

「エンジニアの」という邦題ですが、実際には、「システム管理者の」です。著者の描く日々の生活を読む限り、SEやプログラマと呼ばれる職種の人たちとは、違うようです。システム管理者や、運用エンジニアの生活に近いと思います。
目新しいアイディアというものはありませんでした。しかし、単純な行動原則に「サイクルシステム」と大げさな名前をつけるところが、アメリカ人っぽい匂いを感じました。(毎週の24を見逃さないために、テレビを録画するようになったと書いてありましたので、きっとアメリカ人だと思うのですが。)野口悠紀夫さんのタイムマネジメントの理論に近いものも幾つかあります。「データベースを一つのオーガナイザにする」は、野口氏の「ポケット一つ原則」に相通ずるものがあります。また、相互不可侵条約を仲間と締結して、特定の時間帯、「割り込み」事項は、全て専任者に処理してもらう、という考え方も、「割り込みに何とか対処しなければならない。」という点で、野口氏の考え方に通じるのではないかと思います。初めて触れたもので、興味を持ったのは、RTというリクエストトラッキングシステムです。フリーツールなので、それを導入できるサーバさえあれば、導入したいものです。Windowsにインストールすることは想定していないので、UNIXサーバがなければ難しいのかもしれません。ただ、電子メール管理として上げていた手法は、私には出来ません。数時間に一回だけ、メーラーを開いてメールをチェックし、それ以外は、閉じていろ、という行動原則が、記されていましたが、私には絶対に出来ません。不安だから、ということではななく、【至急】とついたメールが、顧客から私だけに飛んでくることがあるからです。CCに〜を入れてください、とお願いしているのですが、急いでいるときほど、そのことを覚えていてくれないのです。この本の根底に流れる雰囲気のようなものには、共感を持ちます。日々忙しい全てのITエンジニアの役に立つかどうかは分かりませんが、一読しても良いような気がしました。